給料の低さも、人間関係に次いで多い退職理由となっています。
統計データによると、令和3年度の保育士の平均給与は、月額256,500円、年間賞与など744,000円、年収に換算すると約382万円でした(※1:2023年3月調査時点)。国税庁の調査によると、令和3年の平均給与は443万円となっており、やはり保育士の給料は平均より低いことがわかります(※2:2023年3月調査時点)。
「子どもの命を預かっている責任のある仕事」「子どもの成長に関わる専門性の高い仕事」と言われているにもかかわらず、保育士の給料はなぜ安いのでしょうか。原因や給料アップの方法を紹介します。
保育所で定められている「公定価格(保育園を運営するために必要な費用の金額)」は、子ども1人あたりの教育や保育にどのくらい必要なのかを地域の事情なども含めて総合的に判断し国が決めています。費用の中には幼稚園や保育所の職員の人件費も含まれているため、施設や保育士が希望する給料がもらえるわけではありません。私立保育園では園の運営状況によって保育士の給料が低く設定されてしまうこともあるようです。
保育士は専門知識やスキルが必要なため、指定保育士養成施設を卒業するまたは一定の条件をクリアして保育士試験を受け、国家資格を取得しなければなりません。国家資格が必要な職業だと知らない人もいるなど、子どもと毎日触れ合っていればいい、特別なスキルは必要ない、といった誤解をされてしまうこともあるようです。
保育所は国からの補助金と保護者からの保育料で運営されています。私立の保育所は、指定された制服や教材など、保育料以外の費用がかかる場合もあります。補助金は税金でまかなわれています。補助金を上げると国民の負担が増えることになり、保育料を上げれば子どもを預けられない家庭が出てくるかもしれません。利益を出して運営している一般企業とは異なるため、給料に差が出てしまいます。
子どもの面倒は母親が家庭でみることが当たり前、という固定概念は根強く「保育は子育ての延長」だと捉えられてしまったり、保育士の専門性について深く考えられてきませんでした。その名残から保育士の給料が安く設定されてきたのも給料が安い要因のひとつと言えます。
給料を上げるには、公定価格あるいは保育料を上げることが有効ですが、保育士にその権限はなく、現実的な方法とはいえません。キャリアアップや転職など、自分で給料アップできる方法を検討してみましょう。
研修などを受けてキャリアアップし、給料を上げる方法です。「主任」といった役職がつくと、給料は上がります。キャリアアップ研修では、主任保育士や園長のほか、以下の役職を目指すこともできます。
ある程度の実務経験が必要になりますが、処遇改善が受けられるため、保育士をしながらキャリアアップを目指したい方は、研修を受けてみてはいかがでしょうか。
キャリアアップ研修とは、厚生労働省が制定した保育士の待遇向上と処遇改善を目的とした制度です。平成29年(2017年)4月にガイドラインが制定されました。※
保育士としての経験年数や役職などの要件を満たしたうえで、所定の研修を受講し、技能を習得すると補助金(処遇改善)が受けられます。一度研修を修了すれば保育園を退職しても無効にならないため転職にも有利です。都道府県別に実施されますが、転職で県外に移動しても適応可能です。
ただし、保育園ごとに人数制限があり、補助金の分配方法は各保育園に任されているため、詳しいことは勤務先の保育園に確認してください。
※参照元:BrushUP学び「保育士等キャリアアップ研修とは?研修を受けるメリットや方法を紹介!」(https://www.brush-up.jp/guide/sc35/training)
キャリアを積んで主任や園長になると役職手当が支給されるため給料もアップします。主任は園長をサポートする中間管理職、園長は保育だけでなく、保育士の人事や経営にもかかわるためやりがいがありますがその分負担も増えます。
内閣府の調査によると主任保育士の場合 年収(賞与込み):公立6,740,700円・私立5,075,592円、園長の場合 年収(賞与込み):公立7,595,808円・私立6,790,740円です※。公立は地方公務員になるため安定した収入が得られます。
自治体ごとに年齢制限があり、公務員試験に合格しなければならないなどの条件はありますが、挑戦することで道が開けるかもしれません。運営施設の方針や人員によっても異なるため園内で役職につくには確認が必要です。
※参照元:ウィルオブ「保育士で給料を上げるには?差がつく理由と年収アップの4つのポイント」(https://willof.jp/column/knowledge/12787/)
業務の効率化を図るのも、ひとつの方法かもしれません。
給料が安いと感じる要因には「業務量が多すぎて割に合わない」点もあげられるでしょう。製作や書類、行事の企画など、保育士の業務は多岐にわたります。
業務のなかで、効率化ができそうなものを見つけ、保育士一人ひとりの業務負担を減らせられれば、給料が変わらなくても心身の負担は軽くなり、働きやすくなります。業務の見直しをしてみましょう。
給料アップは、自分ではどうにもならない場合もあります。給料アップが見込めない際には、好条件の保育園へ転職するのも、ひとつの方法です。
保育園は、施設の形態や都道府県によっても給料が異なります。なかには基本給が高めの園や、待遇が充実している園もあるため、求人票を見てみるのもよいでしょう。
また院内保育では、夜勤の保護者の子どもも預かることから、24時間開園している場合もあります。そのため、私立の保育園より給料が高い傾向があります。
保育所の数も年々増加傾向にあるといわれており、今後も増え続けるでしょう。保育士の求人倍率は高めをキープしています。保育所が増えれば保育士も増やさなければいけないので保育士のニーズは高いと言えます。
日本の給与所得者全体の平均と比べると、保育士の給料は安めですが、国の制度や働く環境も改善されつつあります。
今の状況に満足できなければキャリアップ制度を利用して給料アップを検討してみましょう。勤め先に物足りなさを感じているならもっと待遇の良い施設に転職することも視野に入れてみるのもいいかもしれません。
転職先をチェックする際は、賞与や手当の記載があるかを確認すると、好条件の園を見つけやすくなります。
2023年1月18日時点で「保育士バンク(https://www.hoikushibank.com/)」にて「埼玉県×認可保育園×20~25万円×正社員×残業なし」で検索して表示された保育園グループの内、採用に関する専用のサイトを持つ保育園グループの中から、埼玉県内の保育施設が多いものから3つをピックアップ。「働きやすさ」についてそれぞれの特色をまとめました。
14施設(戸田公園、武蔵浦和、川越レイクタウン、西川口など)
17施設(大宮、針ヶ谷、日進、北浦和、戸塚安行など)
19施設(浦和常盤、浦和美園、宮原、越谷、草加、八潮などなど)
【選定条件】
2023年1月18日時点で「保育士バンク(https://www.hoikushibank.com/)」にて「埼玉県×認可保育園×20~25万円×正社員×残業なし」で検索して表示された保育園グループの内、採用に関する専用のサイトを持つ保育園グループの中から、埼玉県内の保育施設が多いものから3つをピックアップ。
・『多様性』を重視し、1人ひとりに合った施設を提案
フロンティアキッズ(さつき保育園、つぐみ保育園など)
⇒上記条件の中で唯一、資格手当・役職手当などキャリア手当を明確にしており、なおかつ保育施設ごとに独自の教育理念・環境を提供している。
・『スキルアップ』を重視し、年60回の研修を実施
WITH GROUP/彩保育会(うぃず保育園)
⇒上記条件の中で唯一、研修制度の年間回数などの詳細を明確にしている。
・『システム化』を重視し、AI導入による業務改善を提唱
・アルタナーサリー(アルタキッズ)
⇒上記条件の中で唯一、AI導入による業務改善を提唱している。